手術室看護師が気をつけたい周術期の事故原因とその対策

器械の管理ミス・患者のアセスメント不足・麻酔導入の援助ミス・不十分な体温調節など

不適切な手術体位による褥瘡の形成
長時間の場合、患者さんの負担が大きい

手術体位は、手術をより安全で確実に行うための準備の1つとして重要です。一度体位を決めて手術を開始すると、終了まで患者さんの体位変換や除圧などのケアはできなくなります。

短時間の場合は問題ありませんが、手術内容が予想以上に困難をきわめ、長時間を要するようになると、患者さんの体重が局所に集中し、褥瘡を形成してしまいます。

このようなアクシデントを回避するためには、安全性のある固定具や保護材料の準備が重要となります。また、保護材料は患者さんの身体に優しいものでなければなりません。

褥瘡好発部位には柔らかい敷物を敷き、また踵など一点に下肢の重心がかからないようにしなければなりません。エアマットの使用も効果的です。術中は術や似影響を及ぼさない範囲内で患者さんの身体のマッサージや関節の屈伸などを行い、循環がスムーズになるようにケアすることも手術室看護の重要なポイントです。

手術器械の管理ミス

手術室看護師の役割の一つに手術器械の管理があります。手術器械は、顕微鏡下で使用される微細なものから、整形外科の大きな器械までさまざまです。

またメスや縫合針などの危険物を取り扱うのも手術室の特徴です。手術室看護師は、それらについて正しい取扱方法やその器械の形状、ネジの有無などについて知っておく必要があります。手術開始前後に機械数の十分な確認を行うことは当然です。

術中はメスや縫合針の手渡しによる医療スタッフの刺傷事故が起こりやすくなります。血液などに汚染されたメスや縫合針などの危険物の取り扱いにおいては、刺傷事故を防止するための工夫が必要です。

手術を安全に終わらせることが手術室看護師の使命ですが、ややもするとルーチンで行われる手術や簡単な手術については、心理的な安堵感から、機械の確認をうっかり怠ることがあります。そのことは、手術終了後に大きな問題を残す危険性があります。

手術中の器械が術野と器械盤を行き交う際に、器械の形状の異常発見にも気をつけなければなりません。気付いた場合、いつネジが紛失したのか、鉗子の先端が折れたのかなどについて確認しなければなりません。

電気メスは、周波電流を用いて組織の切開、凝固、止血を行うものですが、対極板と患者さんの身体との接触が不良であると、熱傷を起こさせる危険があります。さらに、手術に関係しない部位に、無用な痛みを与えることにもなります。

患者の情報・アセスメント不足

手術に際して、患者さんの病態を明らかにするための様々な情報が必要となります。それは、麻酔および手術を行うために必要な情報です。しかしながら、手術室看護師にとっては病態の情報以外に、もっと必要な情報があります。それは患者さんの手術に対する受け止めの様子や不安の状況などです。

例えば、患者さんの麻酔に対する不安が著しく大きい場合、主治医にも麻酔科医にもそのことについて相談できなかったら、その患者さんは不安感を抱えたまま手術室に搬送されます。その結果、麻酔の導入時や覚醒時には非常な恐怖感を抱き、そのことは術後の回復状態にも大きく影響を及ぼします。

このような精神面は目に見えない部分であり、医療ミスとはいえないかもしれませんが、患者さんに精神的な苦痛を与えることは、医療者としてはアセスメントの甘さによるミスと考えることもできます。

対策としては、術前訪問時に患者の不安な思いについて傾聴し、アセスメントを行うことが大切です。前日のうちに麻酔についての不安が解消されていれば、夜間の睡眠が十分にとれ、気持ちを落ち着けた状態で手術に臨むことができ、穏やかな覚醒を迎えることもできます。

麻酔導入時の援助ミス

麻酔導入時は、様々な医療事故が発生しやすい場面です。患者さんの循環動態の変化や呼吸器系の問題などが挙げられますが、見落としがちな項目の一つに、歯牙の欠損・脱落があります。

麻酔導入が困難な患者さんの場合、咽頭鏡や器官内挿管チューブで口唇や歯牙を傷つけることがあります。まれに、歯牙の欠損に気付かないまま挿管チューブが固定され、手術終了後にそのことが発覚し、冷や汗をかく場面があります。麻酔導入時には細心の注意を払わなければなりません。

また患者さんの歯の状態について、術前の情報として得ておくことは大切です。術前に歯のぐらつきがわかっている場合は、挿管時に予測されるトラブルについて、患者さんやその家族に説明を行っておく必要があります。

不十分な体温調節

術中の体温調節は、患者さんの全身状態管理のうえで注目しなければならない観察項目の一つです。術中は体温調節機能が障害されるため、そのことが原因で身体へ様々な影響を及ぼします。例えば低体温になった場合、そのことが原因で麻酔覚醒が遅延するということがあります。

体温調節は看護師の観察力によることが大きいため、術中は常に体温保持を意識して行い、万が一低体温になる場合は、輸液の保温や末梢の保温保持に注意します。また、器械出しの看護師としても患者さんの体温保持を意識し、手術用リネンが洗浄液などで濡れたまま術野に放置されないように、気を配らなければなりません。

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