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手術室看護師の体験談で見る1日の仕事の流れ
民間病院の器械出しを担当しているオペナース(日勤)
関西の企業系病院で働く看護師のAさんは、病棟勤務から手術室に配置されて3年目を迎えました。今日は原発性の肝がんで肝切除が必要になった60歳代の男性患者さんの手術で「器械出し(術者に手術器具を手渡しする役目)」を担当することになっています。
8:15の朝の申し送りに参加して、手術スケジュールや注意事項・確認事項を把握した後、手術室で室内の安全(医療機器の電源コードの配置位置)と室温・湿度の調整などの準備をします。
準備がちょうど終わった頃、手術部の入り口に患者さんが到着したとの連絡があったため、迎えに行って病棟看護師から申し送りを受けました。肝切除は長時間に及ぶ手術になるケースが多いため、患者さんはかなり緊張しているようでしたので、患者さんが好きな相撲や野球などの世間話をして気が紛れるようにしました。
器械出しの看護師は術者と同様に手を洗浄・消毒し、滅菌ガウンを着用して手術室に入ります。まずはじめに、手術器具やガーゼの数を数えて、手術後に器具やガーゼの「置き忘れ」がなくキチンと回収されているか照合できるようにしておきます。
患者さんを手術台に寝かせて、麻酔科医が全身麻酔を行いますが、この患者さんは腰を悪くしているので、長時間の手術で床ずれができないように、手術台のマットの位置を工夫しました。
手術が始まると、術者の指示に従いメスや剪刀、鉗子、持針器など様々な医療器具、針・糸を手渡しします。糸にも、太さや性質(体に吸収されるか非吸収性か、編み糸かそうでないか、など)に違いがあるため、常に数種類用意しておきます。
医師が術野から目を離さなくても済むように、指示した瞬間に適切な器具を手渡しすることが求められますが、そのためには手術の流れを読む能力が欠かせません。もっとも基本的な外科の開腹手術でも数十種類の道具を使い分けることになるので、最初は大変でしたが、経験を積んだ現在はスムーズにできるようになりました。
不測の出血等もなく無事に手術が終了し、麻酔科医が麻酔を覚ましました。全身状態が落ち着いていたので、患者さんをストレッチャーに移して搬送し、病棟看護師に採集のバイタルサインや麻酔科医の指示について申し送りを行いました。
午後には翌日手術を受ける患者さんの術前回診をするために病棟へ行き、手術中の看護に問題がないかどうかの確認を行いました。この日の手術はこの1件だけでしたが、緊急手術がある場合には、日勤終了の時刻を過ぎてしまうことがよくあります。
大学病院の手術室の当直(器械出し):予期せぬ急患が多く、苦労が絶えません
現在勤務している大学病院の手術室は、変則2交替制で日勤帯が8時~16時30分、当直が16時~8時30分という勤務形態(休憩はいずれも1時間30分)となっています。
手術室の新人ナースは、当直勤務に入る前に業務上のステップを踏み、ある程度、手術介助を経験して師長、副師長、プリセプターの評価のもとに当直の勤務に入ります。そのため、病棟勤務の看護師に比べ当直に入る時期は3~4ヶ月程度遅れます。
私が当直を初めて経験することになったのは、今から8年ほど前の入職してから7ヶ月目のことで、当日はもちろん、前日から緊張しっぱなしだったことを今でも鮮明に覚えています。
当直帯の勤務内容は、手術介助、急患対応、使用した器械のセット組み、滅菌物のパックなどです。日勤リーダーからの引継ぎを受け、当直リーダーが指示する業務を行うことで精一杯でした。
その日は夜中の3時ごろに電話が鳴り急患の申し込みがありました。帝王切開の急患でしたが、当直の勤務だけでなく、帝王切開の手術につくのことも初めてだったので、手術の流れなどを理解・把握していない状況で、直接介助(器械出し)につく不安もありました。
仮死状態になっているお腹の赤ちゃんのことを思うと、動悸が高まりました。速やかに急患の受け入れ準備を整える先輩ナースの指示に従って、自分もできる範囲で準備をしました。患者さんが入室して手術が開始されてからは、帝王切開ならではの早い進行で、手術はすぐに終了しました。
私自身も無我夢中で介助を行いました。赤ちゃんの産声を聞いてホッとする間もなく手術が終了し、無事に母子ともに病室に帰室後、全身が緊張で強張っていたせいか体が思うように動きませんでした。
私が初めての症例の手術で不安だということを先輩ナースは理解して、随所で適切な助言と指導をしてくれました。そのおかげで無事に初めての当直を無事に終えることができて、今でも感謝しています。
当直を経験することにより、日勤帯と当直帯の手術室の流れ、雰囲気、業務内容が異なることを身を持って実感できました。また、当直体制での急患の対応については手術室全体の状況を把握して適切な判断が要求されると感じました。
手術室に勤務してから8年ほど経ちましたが、今では当直業務を理解し自分で考えて行動できるようになりました。急患時も、動揺せず冷静に状況判断して対応できるようになりましたが、初めての当直勤務のときの緊張感や体験したことが、今でも鮮明に記憶に残っています。また、忘れてはならないことだとも思います。
振り返ってみると、新人のときの不安や緊張はそのときでしか感じられず、そのとき体験したことから獲得したことや思いは、これから看護師としてキャリアを積んでいくうえでとても重要だと思うからです。自分が新人指導に携わるようになり、特にそう感じるようになりました。
初めての当直を迎える新人ナースはとても不安だと思います。特に手術室の場合は予期せぬ急患も少なくありませんし、全科の症例を経験しない状態での当直勤務になるパターンがほとんどでしょう。新人ナースは指示されたことを的確に行い、不明瞭なこと、不安なことがあったら先輩ナースに助言をもらいながら問題を明確にして、一つ一つ看護業務を理解して身につけていくことが重要です。
そして、当直でも日勤業務を踏まえて安全・安楽を考慮した看護を患者さんに提供し、周手術期看護を実践していけるように頑張って欲しいと思います。